だんごむし工房

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カイエソバージュ1-3 バナナと石

中沢新一『人類最古の哲学 カイエ・ソバージュⅠ』講談社選書メチエ,2002】

〇過去記事はこちら
(第1回:神話の時代)
https://d-m-corocoro-studio.hatenablog.jp/entry/livre/cahier_sauvage/1-01

(第2回:コノハナサクヤヒメの物語)
https://d-m-corocoro-studio.hatenablog.jp/entry/livre/cahier_sauvage/1-02

こと:
コノハナサクヤヒメ、からのー、もう一話!
インドネシアのポソ族に伝わる神話、、、バナナと石!

しま:
バナナ?
そういえばぼくね、バナナのマメ知識を持ってるんだよ。

こと:
そっか、すてきだね。
それじゃ、バナナの神話に進むよー!

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しま:
待って。話させて。
このタイミングでしかお披露目できひん知識なんや。

・・・さて、ここで突然ですがクイズです!
実は、日本に輸入されるバナナはすべからく緑色です。なーぜだ!

こと:
んー、なぜかなー?
さて。

はじめ人間は、神様が縄に結んで天空から釣り下ろしてくれるバナナの実を食べて命をつないでいました。ところが・・

しま:
ちょっ、、神話はじまってるやん!ストップ!
せっ、正解は、、
「黄色く熟したバナナには害虫が入っている可能性があるため、熟す前の青バナナで輸入するよう植物防疫法に定められているから」
でしたー!

ふふふ、店に並ぶころにタイミングよく熟するためって思ったでしょ?
農水省のページで勉強してきなっ!
https://www.maff.go.jp/j/heya/sodan/1705/01.html

こと:
あっ、しまちゃんそっち歩いたら、、

しま:
(つるっコテン!)痛っ!
なんでこんなところにバナナの皮があんねん!もう!

こと:
(神話だけに、コテン的な、、?)
さっ、バナナと石の話、語るよー!

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◆バナナと石 
(松村武雄『日本神話の研究』[第三巻]培風館

 はじめ人間は、神が縄に結んで天空からつりおろしてくれるバナナの実を食べて、いつまでも命をつないでいたが、あるときバナナの代わりに石が降ってきたので、食うことのできない石などに用はないと、神に向かって怒った。

 すると神は石を引っ込めてまたバナナを下ろしてやったが、そのあとで
「石を受け取っておけば、人間の寿命は石のように堅く永く続くはずであったのに、これを斥(しりぞ)けてバナナの実を望んだために、人の命は、今後バナナの実のように短く朽ち果てるぞ」
と告げた。

それ以来、人間の寿命が短くなって、死が生ずるようになった。

しま:
素朴!話のすべてが素朴や!
ついでになんか、「ああそうでしたか。」って感じが否めない。

、、、なんだけど、これまでの流れを踏まえて見えてきたところもある。
前回のコノハナサクヤヒメの物語も、植物(コノハナサクヤヒメ)だけを選んで、石(イワナガヒメ)を退けた人が短命となってしまう話やったから、同じようなメッセージやったはず。
インドネシアでも似たようなテーマが残されているんやね。

こと:
植物は、美しくみずみずしくて魅力的。だけど柔らかくて儚い存在で、すぐに枯れてしまう。
岩石は、ゴツゴツしていて華やかさはない。だけど固くて強い存在で、永く形を残す。
寿命もあって、きれいなものに惹かれてしまう人間は、植物に近いものであり、岩石からは遠いものである、という認識があったのだろうね。

しま:
この二つの神話からは、
「人間は、自分に近い綺麗なものや美味しいものだけを手に入れてしまうもんや。そんな姿勢やと、大切なものを失ってしまうんやで」という主張が見られるね。
自分の表面的な感覚だけを信じひんよう、神話の形をとって年長者から若者へ語り継がれてきたんかな。

こと:
中沢さんは、神話のことを

人間に、自分に相応しいつましい場所を宇宙の中で与えようとした哲学

と表現しているよ。

しま:
自分にふさわしいつましい場所。
人間はちっぽけな存在なんだよ、だから世界は自分中心に回ってる、みたいに勘違いして調子に乗ったらあかんよ、ってことなんかな。

こと:
カイエソバージュのなかでは、他にもいくつか神話を紹介しているけど、ちょっと省略して次に進むよ!

しま:
え、なんで?
いろんな神話ちょこちょこ見回していくの、発見たくさんでおもろいやん!

こと:
実はね、、私、石が好きなんや。
綺麗な石も無骨な感じの石も、地層になった石も、全て美しいのにやで、なんで石があんな扱いなんや、、。
神話なんて、、。
ちくしょう。

しま:
いや、ちょっと待って。
そのカミングアウトはトークの流れがおかしなるからやめとこ。

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こと:
それにね、しまちゃんとシンデレラの物語について語りたくて仕方がない。

しま:
シンデレラ?

こと:
あれ、実は神話が元になってるんだって。
しかもね、時を超えてどんどん改変が加わって現代の形になっていて、
中沢さんがそれを紐解いていくのがとても面白かったの。
しかしこのままのペースだとシンデレラに全然たどり着けない。

しま:
この素朴なバナナの次にシンデレラを語るの?

こと:
いや、さすがにもう少し準備が必要なの。
だからね、次は燕石(エンセキ)のお話だよ。ちゃちゃっといっちゃうよー!

しま:
えんせき、、、??


※注意
この記事は、中沢新一『人類最古の哲学 カイエ・ソバージュⅠ』講談社選書メチエ,2002を元に記述しています。

カイエ・ソバージュを読んだふたりが興奮して語った、妄想の入り混じったトークの要約です。