だんごむし工房

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カイエソバージュ1-1 人類最古の哲学

中沢新一『人類最古の哲学 カイエ・ソバージュⅠ』講談社選書メチエ,2002】


こと:

きょうは、中沢新一さんの「人類最古の哲学」のお話をするよ!この本は、全5冊からなる『カイエ・ソバージュ』シリーズの第一冊目。とてつもない名著だよ!!

 

しま:

人類最古の哲学、、カイエ・ソバージュ、、
中沢新一さん?中二病のひとなんやね。
単語のパワーがすごくて内容が全然想像できひんけど、これおもしろいん?

 

こと:
中二とか言うな!その筋ではとても有名な人なんや・・・。
カイエソバージュは、「Ⅰ:人類最古の哲学」からはじまり、「Ⅱ:熊から王へ」「Ⅲ:愛と経済のロゴス」「Ⅳ:神の発明」「Ⅴ:対称性人類学」と続くよ。
一連のなかで、人類がこれまで「超越的なもの」とどう向き合ってきたか、その歴史を紐解いていくよ。
きっと、思ってるより100倍面白いよ。人生観も割と本当に変わるよ!

 

しま:

中二系の単語がゴロゴロ並んでおる。ゴツゴツしすぎてて、もはやカッコいいと言ってええのかもよくわからへん・・・。
まあ、人生観とまで言うのなら、お聞かせ願いましょう。
カイエソ、解説お願いしまーす。

 

こと:
(カイエソ・・)では、いっくよー!

 

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1.はじまりの哲学

 

こと:
さて。
突然だけどさ、しまちゃんは、「神話」というとどんな印象を持ってる?
神話といっても、民話とかでもよくて、「昔から伝わっている物語」のことだと思ってくれれば大丈夫だよ。

 

しま:
ほんまに突然やね。
神話・・・民話・・・スサノオが、ヤマタノオロチにお酒を飲ませて、酔っぱらってる間に刀で首切ってやっつけましたーとか?

 

こと:
そうそう。それは古事記とか日本書紀だね。

 

しま:
感想とか言われても困るくらいの印象しかないけど、なんとなく、大味な物語やねーって感じ。
すぐ死ぬし、蘇るし、やたら具体的に「桃の木」とか指定してくるし。
なんていうか、僕に言わせると、話の軸がブレとるね。
「黄泉の国に奥さんが連れ去られたから連れ戻しに行った」とか、設定は面白いし、想像力はまあまあ豊かやとは思うけどね。
やっぱり昔の人は物語作るのうまくなかったんやなーって思うよ。

 

こと:
(コイツ偉そうやな。)なるほどね。たしかに大味。話の流れも突拍子もないように思えるよね。

・・ところがね!カイエソバージュ読んで、そんな神話を理解できるようになってびっくりしたん!
実は神話って、物語を楽しむためだけに作られたものではないんだよ。
本来の目的があって、それを果たすために作られているから、実は厳格なルールに沿って緻密に作られてて、それが永いあいだ伝承されてきたんだよ。

 

しま:
(語りだした。)

 

こと:

これを理解できるとどうなるか?

・・例えば!
図書館になんとなく存在するアイヌ民族の物語もものすごく読める。面白くなる。
あのワケわからなかったはずの話の結末が予想通りになるんだよ!
すごくない?!

 

しま:
(めっちゃ語るやん。)神話とか理解してどうすんのー?

 

こと:
(コイツほんま!)ええから、いっかい、聞いて。

 

しま:
(・・・・。)・・・ごめん。

 

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こと:
さて、風呂敷広げたはいいんやけど、この本、めっちゃ深いねん。
語りだすと取り止めがなくなるから、テーマ区切って複数回にわたって話すよー。

 

しま:
それはナイスなアイデア
で、まずは何をお話しいただけますか?

 

こと:
そだねー。じゃあ今回は、「実際に神話が語られていた時代について」にしよ。
想像してみて。どんな時代だと思う?

 

しま:
狩猟採集!ジビエ!木苺のジャム!

朝起きて、ミーティングして、弁当持って狩りに行くやろ?
ほんでジビエで木苺のジャムでフレンチや。

 

こと:
単語がやたら現代的やん。

 

しま:
んで、僕の見立てでは、神話について話すのはその後や!
朝のミーティングのときは、天候とか見ながら狩りのこと相談せなアカンから、ゆっくり話すなら、

ご飯食べて日が暮れたころ、寝る前のひとときなんちゃうやろか。

 

こと:

きっとそうやと思うねん、例えば、、、

ーーーー

明かりもない、村と森との境界も曖昧な世界。

日が暮れて、世界が緩やかに夜の闇へと溶け込んでいくころ、
少し心細くなったところで語られる物語は、きっと心に響くだろうね。

話すのはいつも同じ、みんなを安心させられる、信頼の厚い人物。

語り手は考えます。どんな物語がいいかな?

 

・・・武勇伝かな?美味しい木の実の見つけ方?

いいや、元気が出る物語や、食べ物のはなしは狩りの前にしたほうがよさそうだな。

 

・・・それじゃ、世界の成り立ちはどうだろう。
世界はどうやってできていて、我々はここでどうやって生きているのか。

 

語り手は、一日のうちの特別な時間にだけ、この世界の秘密をそっとあかします。
聞き手は真剣です。それが自分の知るこの世の理のすべてなのですから。
ーーー

しま:
生きていくための技術は昼に学び、夜は精神を養う時間やったんやね。

 

こと:
この時代の大きな特徴はね、「話し言葉であること」なんだって。
文字に残らない物語は、回数を重ねるうちに話の内容こそ少しづつ変わってしまうけれど、

それは長い時間かけて洗練されていくということでもある。
例えば、神話の中に出てくる鳥や植物の種類ひとつひとつには、昔の人がそれらの動物に対して持っていた印象が残るんだよ。

 

しま:
なるほど・・「無駄に具体的や」って言ったけど、

そこにはホンマに具体的な意味が込められてたってことなんか。

 

こと:
そう。

覚えやすく洗練された物語が、特別な時間に繰り返し話され、繰り返し聞かされることで、記憶や印象に残る。
そうやって、神話に乗せて語られる重要なこの世界の理が、時代を超えて継承されたんだよ。

 

ここでもうひとつ大切なことがあって、

彼らは神話の中に生活のルールを巧妙に組み込むことで、ルールに説得力を持たせ、それで秩序を守ったんだよ。

 

しま:
おお・・!どういうこと?!

 

こと:
ふふふ。
次回は少しずつ、具体例を出していくよ!!

 

※注意
この記事は、中沢新一『人類最古の哲学 カイエ・ソバージュⅠ』講談社選書メチエ,2002を元に記述しています。

カイエ・ソバージュを読んだふたりが興奮して語った、妄想の入り混じったトークの要約です。